「子どものやる気を引き出す方法」と言われてまず思いつくのはなんですか?
多くの人は、子どもを「褒める」と答えると思います。
子どもは褒めたほうがいいという考え方は世間に浸透しているんでしょう。
その証拠に「子どもは褒めてのばしてあげよう!」なんて言葉は誰しも聞いたことがあるんじゃないでしょうか。
しかしですよ、世間に浸透しているからといって、考えもせず鵜呑みにするのは危険です。
というのも、褒め方によっては悪影響を与えてしまう可能性もあるんです!
今回はその危険性と正しい褒め方について考えていきましょう。
Contents
まずはなんで人にやる気がおこるのかを知ろう!
※この物語はフィクションです。
ということで、織田君がやる気が何かわかっていないので、「どんな褒め方がよくて、どんな褒め方がよくないのか」という話の前に、「そもそもやる気って何?」というところからみていきたいと思います。
人のやる気には二つの種類があります。
一つは「外発的モチベーション(外発的動機づけ)」。もうひとつは「内発的モチベーション(内発的動機づけ)」です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
- 外発的モチベーション(外発的動機づけ)ってなに?
外発的モチベーションとは、ある行動をするときに「お金」や「評価」などの外部から与えられる報酬を得ようとする意欲のことです。
行為そのものと行為の目的が異なっている状態です。
- 内発的モチベーション(内発的動機づけ)ってなに?
内発的モチベーションとは、ある行動をするときに「楽しさ」や「充実感」などの自分の内側から生じる報酬を得ようとする意欲のことです。
行為をすることが目的になっている状態です。
「内発的モチベーション」「外発的モチベーション」どちらのモチベーションが子どもにとってより良いの?
外発的モチベーションは「評価」や「お金」などを目的にしているわけですから、報酬がなくなってしまえばモチベーションが低下し、パフォーマンス(行動)も低下します。
例えば、テストでいい点をとったらお金をもらえるという外的報酬が目的となって勉強をしていた場合、報酬がもらえなくなったら、勉強をする意欲が低下し、勉強量も減ってきてしまいます。
この場合、主導権を握るのはは外的報酬を与える人です。多くの場合は親ですね。
報酬がなくなってしまえば、やる気がなくなる。つまり、親の行動によって子どもが縛られてしまっているんです。
子どもの自立性や主体性というのはほとんどありません。
反対に、勉強をする「楽しさ」やテストで成果を出す「達成感」を目的に勉強しているのであれば(内発的モチベーション)、自分の興味のあることを進んで勉強していきます。
将来、受験や就職など、自分の興味のあることを主体的に決めていく機会が多くあることを考慮すれば、内発的モチベーションのほうが子どもにとってよいのはわかって頂けると思います。
つまり、自立性があり、興味のあることにどんどん自分で挑戦していくお子さんを育てたいのなら、内発的モチベーションをうまく引き出してあげればいいのです。
多くの親御さんの求めるやる気とはこの内発的モチベーションではないでしょうか。
じゃあ、内発的モチベーションってどうやって引き出すの?
ここまで、「やる気って何?」ということと、長期的に見ると内発的モチベーションのほうが、子どもにとってよりよいということがわかって頂けたと思います。
織田君のようにこの説明の中で勘のいい人のは、ある矛盾に気づいたかもしれません。
- 内発的モチベーションは子どもの中から生まれる「楽しさ」や「充実感」といった内的報酬
- 親が与えることができるのは、「ご褒美」や「褒める」といった外的報酬
そうです、親が何かをしてしまうと外発的モチベーションが高まって、内内発的モチベーションが低下してしまう可能性があります。
Lepper et al.(1973)は、絵を描くのが好きなこどもにあらかじめご褒美を約束して絵を描かせました。すると、ご褒美をもらうことを目的にしてしまった子どもは自発的に絵を描かなくなってしまったのです。
織田君はおいといて、これは、当初持っていた内発的モチベーションが「ご褒美」という外的報酬を与えることによって低下する「アンダーマイニング効果」という現象です。
ということで次は、どんな外的報酬がお子さんにどんな影響を与えるのかを見ていきましょう。
金銭報酬を与えたら子供のやる気はどうなる?
テストでいい点をとったら、ご褒美にお金をあげる、または欲しい物を買ってあげるということをしたことがある人は多いんじゃないでしょうか?
Deci(1971)は、大学生の被験者を二つのグループにわけて興味のある課題(当時大学生の内で流行っていたソマパズル)を与えて、金銭報酬が内発的動機にどう影響するかを調べました。
【第一セッション】
〜休憩終了後またソマパズルに取り組む〜
【第二セッション】
〜休憩中〜
〜休憩終了後またソマパズルに取り組む〜
【第三セッション】
〜休憩中〜
こんな感じで、(いやこんな感じではないと思いますがw)、明智君率いるAグループに金銭的報酬を与えて休憩中にソマパズルにどれだけ取り組むかを指標として、内発的モチベーションの変化を調べました。
Bグループには特に報酬は与えずにAグループと同じことをしました。
↓まとめるとこんな感じですね↓
第一セッション | 第二セッション | 第三セッション | |
Aグループ | 報酬なし | 報酬あり | 報酬なし |
Bグループ | 報酬なし | 報酬なし | 報酬なし |
それぞれ、休憩時間にどれだけソマパズルに取り組んだのか、結果はこちら!
第一セッション | 第二セッション | 第三セッション | |
Aグループ | 平均248秒 | 平均313秒 | 平均198秒 |
Bグループ | 平均213秒 | 平均205秒 | 平均241秒 |
これに対して,Bグループでは,第1セッションの休憩時にパズルにふれた時間(平均213秒)と、第2セッションの休憩時 にパズルにふれた時間(平均205秒)に比べ、第3セッションでは増加しました(平均241秒)
この結果は、金銭報酬を与えるともともと持っていた内発的モチベーションが低下することを示しています。
当時の私は、新しい事を知るのが楽しくて、自主的に勉強をしていました。その成果もあってか、あるときテストで良い順位をとったのです。その結果を親にみせると、ご褒美としてお金をもらいました。親戚もお金をくれたのを覚えています。
それからというもの、お金欲しさにがむしゃらに勉強して、一年を通してほとんど学年1位をとるという結果を残しました。しかし、高校生になってからは、テストの成果に対してお金をくれなくなりました。そのあとは、どうなったかわかると思います。いつのまにか当初あった新しいものを知る楽しさは消え、勉強に対して無気力になってしまいました。
言語報酬(褒める)を与えたら子供のやる気ははどうなる?
ながらくお待たせしました!ついに褒めることには効果があるのかがわかります。
はい、そんな織田君のためにも簡潔に説明しましょう。
Deci(1971)は、言語報酬が内発的モチベーションに及ぼす効果について、先ほどのソマパズルと同じ構造の実験をしました。
ただ、違うのは明智君率いるAグループに金銭報酬を与えるのではなく、正の言語報酬(褒める)を与えたことです。
この結果、言語報酬を受けたAグループの被験者は、言語報酬を受けなかったBグループの被験者に比べて内発的モチベーションが高まりました。
また、木村(2007)は、小学5年生を対象にした実験で、言語報酬が取り除かれても、内発的動機づけは低下せず、むしろ高まることを示しました。
そして、たとえ褒めることがなくなるようなことになってもアンダーマイニング効果はおきないということです。
補足ですが、ハーロック(1925)によると「しかる」ことは、一時的に行動量をあげ、パフォーマンスを向上させますが、次第にパフォーマンスも低下します。
私の推測になりますが、内発的パフォーマンスも低下しているのではないでしょうか。
「しかる」という行為事態は悪いとは思いませんが、しかることでやる気を出させるのはやめておいた方がいいと思います。
褒めることの落とし穴!やたら無闇に褒めたらだめ!
そこで、お前に次の大きな戦の大将を任せたい。やってくれるか?
上手くいかなかった原因ですが、マンガでわかる心療内科さんがとてもわかりやすく説明していたので紹介したいと思います。
とてもわかりやすいですね。このことについて、『その科学が成功を決める』にさらにわかりやすくかいてあります。
頭がいいと褒められた子供は気分はよくなるが、同時に失敗を恐れるようになる。成功しなかったら格好が悪いと考え、むずかしい問題への挑戦を避ける。
しかも頭がいいと言われた場合、自分はがんばらなくてもよくできると思いがちである。そのため必要な努力をしなくなり、結果として余計失敗する割合が高くなる。
そして不幸にして実際に悪い成績をとると、子供は完全にヤル気を無くし、無力感に襲われる。
『その科学が成功を決める』より
もう私が説明する必要ありませんね。私が説明したら逆にわからなくなってしまうかもしれません。笑
ということで、褒める事は内発的モチベーションを高めるが、知性や才能を褒めるのは逆効果になることがわかりました。
次は、それを踏まえて、正しい褒め方についてまとめていきます!
待たせたな!子供のやる気を出す正しい褒め方はこれだ!
ここでは、今ままで説明してきたことに注意して、正しい褒め方について書いていきます。
そのため、その3つを感じるような褒め方をすれば効果的にやる気を引き出せるのです。そこに注目して見ていきましょう。
- 有能性を感じる…自分がある行為をうまくできると感じること
- 自立性を感じる…ある行為を行うかどうか自己決定していると感じる事
- 関係性を感じる…自分と他者との間に安定したつながりを感じること
結果ではなく努力・プロセス(過程)を褒める
結果を褒められると、褒められることが目的になってしまう可能性があります。そうなると、外発的モチベーションが高まって、内発的モチベーションが下がってしまいます。つまり、褒めてほしいがために行動をするようになってしまいます。
反対に、プロセスを褒めることで、「自分は、できたんだ!」という有能性を感じ、自信がついていくことで、内発的モチベーションが高まるのです。
内発的モチベーションのほうが子供にとってより良いのは理解してもらえたと思うので、内発的モチベーションを高めるために努力やプロセスを褒めましょう。
また、努力を褒められた子は結果を怖れずに、やってみようと思うようになります。
プロセス・努力を思い出させるような質問をしながら褒める
「〜ができるなんて頑張ったね!どうしてそんなに頑張れたの?」
「〜をやりきるなんてよくやったね!どうやってできたの?」
このように、プロセスや努力などの自分が頑張ったことを思い出す質問をします。
すると自分はできたんだという再確認から、自分で頑張ったんだという自立性や、自分はできるんだという有能性が感じられ、内発的モチベーションが高まります。
具体的に褒める
「よくできたね!」や「すごいね!」、「頑張ったね!」などの褒め言葉だけでなく、何を頑張っていたのか、何がよくできたのかを具体的に褒めてあげましょう。
具体的に褒めることで、何に対して褒められているのかがはっきりして、自立性や有能性が高まります。
まとめ
- やる気の種類には内発的モチベーションと外発的モチベーションがある
- 子供のとってより良いと考えられるのは、内発的モチベーションである
- 内発的モチベーションを高めるために金銭報酬や賞状などの外的報酬はNG
- やる気をあげようと言語報酬(しかる)を与えることは、パフォーマンスを一時的にのみあげるが、後に低下させるためNG
- 言語報酬(褒める)は、内発的モチベーションを上げる効果があるため、褒めることには意味がある
- しかし、才能や知性を褒めるのはNG
- 有能性や自立性、関係性を感じられる褒め方をするのが良い
初めからこのように褒めるのは難しいかもしれませんが、意識をして実践してみてください。
[…] たまに、できなかったことを責めるお母さんがいるので、絶対にやめてほしいと思って、今回この記事を書きました。 赤ちゃん期から幼児期にかけての子供って、「初めて」がいっぱいです。 初めてのことに挑戦するだけで、子供の心はドキドキワクワクしてます。 だから、たとえできなくても「よく頑張ったね!」って言ってあげてほしい。 おむつトレーニングがうまくいかなかったり、なかなかひらがなを覚えてくれなかったり そんなこと、絶対にいつかできるようになるんだから できたことに目を向けて、できないことはながーーい目で見てあげましょう。 ちなみに、ある程度言葉が分かるようになった子供には、ただ漠然と「すごいねー」と褒めたり、才能だけを褒めたりするのは逆効果のようです。 不登校変革部というブログ管理人の松井さんが、私のこの記事をご覧になり、心理学の視点からより詳しく書いてくださりました!!! めっちゃわかりやすくて勉強になるので、お子さんをお持ちの方は是非ご覧ください! 注意!褒めることで悪影響もあるぞ!子供のやる気を出す正しい方法 […]